電気工事の図面の見方を解説!種類と図記号一覧【初心者向け】
電気工事において必要不可欠なのが、電気の流れる系統を具体化し、電気部品や設備の設置場所や配線をわかりやすくまとめた「図面」です。
そんな図面に関して、以下のような疑問や不安を感じている方も多いのではないでしょうか?
- そもそも図面には、具体的にどんな役割があるの?
- 電気図面にはどのような種類がある?
- 図面の見方って?どんな図記号がある?
- 実際、図面にはどのようなメリットがあるの?
そこで本記事では、電気工事における図面についての理解を深めるため、基礎知識から図面の見方、図記号の種類まで網羅的にまとめました。
さらに電気工事で役に立つだけではない、図面を保有する3つのメリットもご紹介します。
初心者向けにわかりやすく解説していますので、他の記事ではうまく理解できなかった方や、とにかく簡単に理解したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
監修者
登 雄三
(のぼり ゆうぞう)
保有資格:工事担任者(AI・DD総合種)/電気工事士
2010年設立「株式会社デジコンnet」の代表取締役。本社を構える神戸を中心に、全国各地でビジネスフォン・複合機・防犯機器などのOA機器の販売や電話工事、電気工事、LAN配線工事、VPN構築を主に手掛ける。2023年には名古屋へ拠点進出。
2010年設立「株式会社デジコンnet」の代表取締役。本社を構える神戸を中心に、全国各地でビジネスフォン・複合機・防犯機器などのOA機器の販売や電話工事、電気工事、LAN配線工事、VPN構築を主に手掛ける。2023年には名古屋へ拠点進出。
電気工事に欠かせない「図面」とは?
まずはじめに、「電気工事における『図面』とは何か?」「どうして図面が必要なのか?」について考えてみましょう。
一般家屋やビルなどの電気工事において、図面と呼ばれるものは主に下記の2種類です。
- 設計図
- 施工図
それぞれの図面について、違いや用途をわかりやすく解説していきます。
電気図面とは何か?工事に必要な理由
電気図面とは、その設計図の設備でスイッチやコンセントなどが実際に使用できるよう、電気の流れる系統を具体化し、電気部品・設備の配置場所や配線を図にまとめたものです。
簡単に言うと、どこで何のために電気が使われて、設備や配線はどうなっているかを明確にしたものになります。
壁に設置されたスイッチやコンセント、照明器具、換気扇などの電気製品は、電線によって接続されていますが、電線は壁の中や天井、床の下に隠れていて簡単には把握できません。
そこで、どこにどの電線があるのかを確認するには「図面」が必要になるというわけです。
【図面の主な記載事項】
- スイッチやコンセントの設置場所
- 電線のルート
- 電気容量や大きさ
- 電線の太さ
また図面は工事の際に必要であるだけでなく、後のメンテナンス作業時などでも活用できるため、保管しておく必要があります。
例えば、模様替えに伴って社内の電線をつなぎ直したり、増設や移設の工事をしたりする際には、基本的に図面の情報に基づいておこなわれます。
図面は、将来的にスムーズな工事や作業のために確保が必須であると押さえておきましょう。
電気図面の「設計図」「施工図」の違い
電気図面の「設計図」と「施工図」の特徴を簡単にまとめると以下のとおりです。
設計図(電気設備設計図)とは?
スイッチやコンセントなどの電気部品と電気設備を繋ぐ配線を、回路記号であらわした図面を「設計図(電気設備設計図)」といいます。
また配線だけでなく、電気設備を設置する建物の広さ・高さなども明記されます。
電気工事は定期的な施工が必要なので、一定期間の保管が推奨されています。
施工図(電気設備施工図)とは?
設計図を元に、施工を行うためのスケジュールや施工方法を図面化したものを「施工図(電気設備施工図)」といいます。
電気設備設計図には具体的な施工方法は明記されないため、この施工図を併用し、現場で電気工事の段取りを確認します。
まとめると、設計図と施工図との大きな違いは施工方法に関する記載の有無です。
設計図は、回路記号を使って設備の位置や部品数、配線などが細かく明記されていますが、施工方法は記載されていないため、施工する際には施工図が必要になります。
電気工事の図面の種類をわかりやすく解説!
電気工事で利用される図面にはいくつかの種類がありますが、その中でも一般的なのが次の4種類です。
- 単線接続図
- 複線接続図
- 内部接続図
- 屋内配線図
それぞれに目的が異なる図面なので、ここで特徴を詳しく見ていきましょう。
種類①単線接続図
単線接続図は、設置されている機器の接続情報を1本でわかりやすく記した設計図のことです。
通常、配線図は2本の電線を使用して往路と復路を描きますが、単線接続図ではわかりやすく表現するため、2本の電線を簡易的に1本の線でシンプルに描きます。
ただしオフィスの施工図の単線接続図は、単に電気の流れを示すだけの単線接続図よりも詳細な情報を記載します。
では具体的に、階段の照明器具と操作するスイッチを1階と2階の2ヵ所に設置する(3路スイッチ)場合を考えてみましょう。
照明は、1階のスイッチでも2階のスイッチでも同じようにON/OFF操作ができるものです。
実際の単線接続図を下記に示します。
単線接続図は場所ごとや設備ごとに配線の方法を指示する図面として、電気工事の現場ではよく確認されるものです。
シンプルでわかりやすく、接続されている機器などを直感的に理解するには便利ですが、実際の配線はわかりづらいかもしれません。
そこで単線接続図をより詳しく描いた図面が、次にご紹介する「複線接続図」です。
種類②複線接続図
複線接続図は、単線接続図よりも詳細に記したもので、機器の配線関係を実際に接続される本数のままに描く図面のことです。
先ほどの単線接続図で示した照明と3路スイッチを、複線接続図で描いてみましょう。
上の図のように、複線接続図になると、具体的な接続方法が理解できるようになります。
しかし複線接続図は、具体的な接続方法が詳細にわかるとはいえ、あくまでも簡易的で、照明器具やスイッチ、ジョイントボックスなどの設置場所の情報は記載されません。
よって複線接続図は、電気工事現場では全体像を把握するというよりは、実際に配線をおこなう際によく利用されるものだと理解しておくと良いです。
種類③内部接続図
内部接続図は裏面接続図とも呼ばれ、実際の機器配置や機器相互の接続を、実位置と各機器の端子の結線まで詳細に描いた図面のことです。
内部接続図では主に、配電盤(外から引き込んだ電気を変換する設備)や分電盤(電気を分ける設備)、制御盤(機器を制御する盤)内部の配線・接続を示します。
特に、配電盤内部の機器配置や機器同士の接続は複雑な場合が多く、それぞれの電線の行き先が重要となります。
また配電盤だけではなく、厨房の大型冷蔵庫やモーターの配線などでも必要となる図面です。
電気配線は、一箇所の間違いが事故や機器の故障につながる可能性もあるため、内部接続図は電気工事の現場で非常に重要な役割を持ちます。
種類④屋内配線図
屋内配線図は電気設備図とも呼ばれ、電源設備、負荷設備、通信設備などの各種電気設備別の図面のことです。
各種電気設備の種別で分けると、さらに以下のようにさまざまな図面があります。
種別 | 図面名称 |
---|---|
電源供給 | 電力引込設備図 受変電設備図 自家発電設備図 蓄電池設備図 UPS設備図 幹線設備図 |
負荷設備 | 電灯・温泉と設備図 動力設備図 舞台照明・音響設備図 特殊設備図(医用負荷等) |
通信・情報 | 電話設備図 構内交換設備図 インターホン設備図 拡声設備図 ページング設備図 テレビ共同受信設備図 |
電気配線図の記号一覧|図面の見方をマスター!
電気工事に必要となる電気配線図には、多くの記号が使用されています。
その記号一つひとつの意味を知らなければ、図面を見ても意味を理解できません。
そこで続いては、最初に電気図面の見方のポイントを解説し、その後に具体的な図記号について詳しく説明します。
はじめに:電気工事の図面の見方のポイント
はじめに、電気図面の見方のポイントは以下の2点のみです。
- 配線の図記号を理解する
- 機器や設備などの図記号を理解する
電気図面にはたくさんの図記号があり、似たようなものも多く全てを完璧に覚えるのは難しいため、まずは配線などの意味を理解した上で、使う頻度の高い基本の図記号から覚えましょう。
また図記号は、基本となる図形に数字などの添え字で意味を持たせているので、まずは図記号を配線やスイッチなど種類別で分け、自分なりに意味付けしながら理解するのがおすすめです。
- 例えば「3路スイッチ」の図記号は、基本的な「スイッチ」の記号の下に「3」と書かれているため覚えやすいですね。
まずは基本的な図記号さえマスターすれば、簡単に理解しやすくなるのでおすすめですよ。
配線の図記号
電気図面では、天井裏配線や床下配線、露出配線など、配線の工法などによって図記号の表記が異なります。
一般的に使用される配線の図記号は、下記のとおりです。
名称 | 図記号 |
---|---|
天井隠ぺい配線 | |
床隠ぺい配線 | |
露出配線 | |
地中配線 | |
立上り | |
引下げ | |
素通し | |
接地 |
また、場合によっては図面中に電線の種類も記載しなければなりません。
電線の種類については、下記に一般的な電線の記号を記載します。
- IV:600Vビニル絶縁電線
- HIV:600V二種ビニル絶縁電線
- IC:600V架橋ポリエチレン絶縁電線
- OW:屋外用ビニル絶縁電線
- VCT:600Vキャプタイヤケーブル
- VCTF:300Vキャプタイヤケーブル
- CV:600Vまたは高圧架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル
- CVT:600Vまたは高圧架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(3本のより線)
配線の際には、鋼管などを使用してケーブルを保護することも必要です。
その管類についても、電気図面上に記載する場合があります。
一般的な管類の記号は下記のとおりです。
- E:鋼製電線管(ねじなし電線管)
- PF:合成樹脂製可とう電線管(PF管)
- CD:合成樹脂製可とう電線管(CD管)
- F2:2種金属製可とう電線管
- MM2:2主金属線樋
- MM1:1主金属線樋
- VE:硬質塩化ビニル電線管(VE管)
照明の図記号
続いては、一般的な照明の図記号をご紹介します。
名称 | 図記号 |
---|---|
ペンダントライト | |
シーリングライト(天井付け照明) | |
ダウンライト(埋込灯) | |
スポットライト | |
引掛シーリング(角型) | |
引掛シーリング(丸型) | |
蛍光灯(壁付け) | |
蛍光灯(天井付け) | |
LED蛍光灯 |
なお円の中に黒塗り部分のある記号は、壁に埋め込まれていることを表しています。
スイッチの図記号
電気工事の図面に記載する一般的なスイッチは、次のような図記号です。
名称 | 図記号 |
---|---|
単極(タンブラ)スイッチ | |
3路スイッチ | |
4路スイッチ | |
パイロットスイッチ (確認表示灯) |
|
ほたるスイッチ (位置表示灯) |
|
リモコンスイッチ | |
プルスイッチ | |
タイムスイッチ |
基本的にスイッチの図記号は黒丸(●)で表し、特殊なスイッチに関しては添字で表現します。
コンセントの図記号
電気工事の図面に記載する一般的なコンセントの図記号は下記のとおりです。
名称 | 図記号 |
---|---|
天井コンセント | |
壁付コンセント | |
2口コンセント | |
定格電流20A用コンセント | |
アースターミナル付コンセント (接地端子付コンセント) |
|
防水コンセント (防雨形コンセント) |
|
引掛形コンセント | |
フロアコンセント(床付けコンセント) |
コンセントの図記号では、「天井取付コンセント」を基本として、一部を黒く塗りつぶしたり添字をつけたりすることで、バリエーションを増やしていきます。
機器・器具の図記号
そのほか、電気工事の図面で使用頻度の高い機器・器具の図記号は下記のとおりです。
名称 | 図記号 |
---|---|
配線用遮断器 | |
漏電遮断器 | |
モータブレーカ | |
VVF用ジョイントボックス | |
ジョイントボックス (アウトレットボックス) |
|
電動機(モータ) | |
壁付換気扇 | |
天井付換気扇 |
以上、電気工事では多くの記号が用いられますが、基本的な図の形状を覚えておけば大半はなんとなく意味を想像できます。
またどうしても分からないときには、上記のような図面の一覧を確認すれば意味を把握できるため、苦手意識などを抱く必要はありません。
- ここでご紹介したのは、最低限知っておくべき基本の図記号であって、実際には他にも多くの種類がありますので、慣れたら徐々に覚えていくと良いですよ。
工事だけではない!電気図面の3つのメリット
電気図面が役に立つのは、実は工事のときだけではありません。
最新の電気図面が手元にあり、なおかつ電気図面の見方を知っておくことで、以下のようなメリットが得られます。
- オフィスの電気設備全体を把握できる
- トラブル時に迅速に原因追及できる
- 可視化によりスムーズに情報共有可能
それぞれについて具体的な事例を挙げて解説します。
オフィスの電気設備全体を把握できる
電気図面の一つ目のメリットは、オフィス全体の電気設備を把握できることです。
もしも図面がない場合、どこにどんな電気部品や設備があって、どのように接続・配線されているかがわからず、電気工事が必要になった時に手間やコストがかかってしまいます。
実際に、電気図面が保管されていなかったために困ってしまったA社の事例をご紹介します。
中古の古いオフィスを使用していたA社にて、業務上の必要性から新たに電気設備を追加で導入することになりました。
しかし、オフィスの電気図面がなかったために、オフィス全体がどのように配線されているのか、電気容量はどのように設計されているのかを確認できず、設備を導入できるか否かが判断できなかったのです。強引に工事を進めたあとで電力容量が不足したり、配線経路が確保できなかったりした場合には、時間と費用を大きく無駄にすることになります。
結局A社は、設備導入の前に状況を確認し改めて電気図面を作成することになりました。
特に中古物件や築年数の古いビルでは、「電気図面をなくしてしまった」「そもそも入居時に図面がもらえなかった」といったケースが多々あるので注意が必要です。
以上より、将来的に設備工事が必要になったときにスムーズに施工できるよう、電気図面の作成と保管は必須だと理解しておきましょう。
トラブル時に迅速に原因追及できる
二つ目に、漏電などのトラブルが起きた際に、電気図面があれば迅速に原因追及できる点も大きなメリットです。
図面があれば配線や設備の位置などの全貌を把握できるため、トラブルの発生源から辿ってどこに原因があるのか特定でき、迅速に対処できるでしょう。
反対に、図面がない場合には、原因箇所や対応が必要な箇所の確認が遅れ、トラブルからの復旧までに多くの時間を要します。
復旧までの時間が長ければ長いほど、業務への支障も大きくなります。
トラブルが生じないことがベストではあるものの、万が一の際に最善の対応をするためにも電気図面は必要です。
可視化によりスムーズに情報共有可能
電気図面は、工事を依頼した専門業者や社内の担当者以外のスタッフが、電気系統に関する情報を理解できるようにするためにも必要です。
例えば、オフィス内の停電で電気系統のトラブルが生じたときに、必ず社内の担当者がオフィス内にいるとは限りません。
では具体的にどのようなことが考えられるのか、B社の実例から見ていきましょう。
電気図面作成時のスタッフが退職した後、情報の共有や引き継ぎをおこなうことなく、その後さらに設備の追加もおこなっていたB社にて、あるとき設備のトラブルが発生。
最終的に大事には至らなかったものの、社内の電気系統の状況が分からず、トラブル対応は行き当たりばったりで対処に時間がかかり、社内はとても殺伐とした状況になりました。
B社のようなトラブルを防ぐためには、電気図面は常に社内で共有できるようにするのはもちろん、工事をおこなったときには常に最新の図面を作り変える必要があります。
電気工事に関するご相談は全国対応のOFFICE110へ
電気図面は、基本の見方さえ分かれば専門的な知識がなくても理解できます。
ただし、新しく電気工事をおこなう場合や設備の状況を改善したいとお考えの際には、電気工事の専門業者に依頼する必要があります。
現在の自社の設備状況を把握したうえで、特に以下の2点については専門的な考えに基づいた対応が必要です。
- オフィス内で機器をどこに配線すべきか
- どこの遮断器に接続すべきか
どの業者に依頼すべきか分からない、とお悩みの場合は「OFFICE110」へお声がけください。
OFFICE110は、以下の特徴をもつ電気工事やOA機器の専門業者です。
- 全国対応&ご依頼から3営業日以内のスピード対応
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OFFICE110では資格保有者をはじめ、専門知識や経験が豊富なスタッフが、OA機器の販売から各種工事までワンストップで対応しています。
対応のスピードや丁寧さに定評があるため、現状の電気図面を見て不明だと感じられている点についてもフォローします。
電気工事が必要なときには、ぜひお気軽にOFFICE110へお問い合わせください。
まとめ
オフィスや工場で新たな設備を導入する際に参考になるのは、電気図面の中でも施工図です。
電気工事の図面の見方においては、各種機器・設備や配線の図記号の理解が重要です。
全ての種類を覚えるのは困難ですが、よく用いられる基本的な記号の意味さえ押させておけば、電気図面を見ておおよその状況がイメージできるようになります。
なお社員が電気図面の見方を理解できれば、以下の3点のメリットがあります。
- オフィスの電気設備を把握できる
- トラブル時に原因追及できる
- スムーズに情報共有できる
図面の基本が理解できたら、設備工事や電気工事の管理・把握も非常にスムーズに進みます。
現在の図面の見方が分からなくて困っている方や、設備の増設・移設などを検討している方は、ぜひ専門業者である「OFFICE110」にお声がけください。