電気を引くための4つの方式とその費用とは?電力会社を装った詐欺に注意!
最近の建築物、賃貸物件にはブレーカー(分電盤)を始めとした電気設備が備えられています。しかし、古い建築物や倉庫などにはまれに電気設備が無いこともあり、その場合は電力会社に依頼して屋内まで電気を引く工事をする必要があります。
ただ、電気を引く工事と言われても馴染みがなさすぎて「何をどうすれば…」という方がほとんどではないでしょうか。電気周りの工事は危険なだけに「電気工事士」などの専門資格が必要で、流行りのDIYで…というのは法律により禁止されています。
そこで、今回は電気を引く上で知っておきたい4つの方式と工事の流れ、費用について詳しくご紹介します。その上で、電力会社が実施している電気設備の安全点検についての詐欺被害についてもまとめますのでチェックしてください。
電気を引くには4つの方式がある
電気を引くにはまず電力会社に工事を依頼する必要があります。ただ、電気を引くと一括りにしていますが実は4つの方式があります。電気を引く工事はもちろん、今後の利便性にも関わる問題なので4つの方式を知ることは大切です。
単相2線式
2本1組の芯線を引く方式のことで、各線間に100Vの電圧が通っています。「単二」とも呼ばれます。主に、1980年代以前に広く普及した方式で、最近では低圧電力でも30A以下での契約に使用されることがあるようです。
日本は100Vが基本と世界的にみても低圧で安全性が高いことで知られます。その為、日本製の家電の多くが100Vを基準に設計・製造されており、国内で電気機器を使用するなら100Vあれば基本的には大丈夫です。
単相3線式
3本1組の芯線を引く方式のことで、各線間に100Vずつ流れており最大200Vの電圧が利用できます。「単三」とも呼ばれます。主に、1980年代以降に普及した方式で、低圧電力でも40A以上での契約に使用されます。
単相3線式では100Vはもちろん、最大200Vと用途に合わせて電圧を変更できるのが特徴です。日本製の一般家電は100Vが基準ですが、OA機器の中には200Vでしか動かないものも。オフィスなら単相3線式は必要です。
動力
3本1組の芯線を引く方式のことで、各線間に200Vずつ流れており最大200Vの電圧が利用できるというもの。「業務用の電力(200V)」とも呼ばれ、商業施設などで使用する業務用冷蔵庫やエアコンなどで使用されます。
ただ、最近の業務用の機器のほとんどは単相3線式の200Vを基準に設計・製造されており動力はあまり使用されません。また、動力の芯線を1線間(200V)に分けて使用するのは基本的に違法と、使いにくさが目立ちます。
高圧引込
キュービクルなどの変電設備を設置し、変電施設から6,600V以上の高圧電力を引く方式のこと。一般的な低圧電力が100Vや200Vに変圧された電気を引くのに対して、高圧電力は自社設備で電圧を下げて使用します。
例えば、ビルや商業施設、工場など高圧電力が必要な施設で使用されるものです。キュービクルなどの変電設備を自社で設置・管理するコストはかかるものの、高圧電力が使える上に電気代自体は低く設定されていてお得です。
電気を引く工事の流れ
中小規模オフィスであれば単相3線式、ビルを所有する大規模オフィスであれば高圧引込で電気を引くのが良いでしょう。電気を引くには電力会社に工事を依頼する必要があります。では、電気を引くまでの工事の流れを詳しくご紹介します。
①申し込み
利用者から電気工事業者または小売電気事業者などへ依頼すると、各事業者から電力会社へと電気を引くための工事の申し込みが行われます。もちろん、利用者から電力会社へと直接依頼することも可能です。ただ、電気を引くと同時に屋内配線などの電気工事も進めるなら、各業者を通した方がスムーズに進みます。
②技術協議
各業者と電力会社の間で計量器や引込線(方式)などの協議が行われます。当然、利用者からの「こんな配線にして欲しい」「電気をこう活用したい」といった要望を盛り込んだ内容です。
③設計調査
技術協議により決まった内容をもとに建築物や周囲の状況を調査し、電気を引く工事に欠かせない図面の設計が行われます。この際、工事部材や人件費(技術費)などの「見積もり」も進めます。オフィス内のデザインにも関わる部分なので、利用者自身も積極的に参加して完成イメージと予算に近づけた内容を目指すのです。
④工事費請求
設計調査が終われば、電気を引く工事に必要となる正確な費用が請求されます。一般的に電柱や電線などの屋外配線は電力会社側の所有物なので工事費用はかかりません。ただし、ブレーカー自体の設置や屋内配線、コンセントなどは利用者側の所有物なので工事費用がかかります。
⑤竣工届出
設計から請求まで進めば、まずは各業者がブレーカーの設置から屋内配線までを行います。その後、各業者が行うべき工事が完了した旨を電力会社側に「竣工届出」という形でお知らせします。電力を引くには先に建築物の屋内の工事を済ませ、その上で屋外の工事を進めるのが一般的なのです。
⑥引込線工事
各業者から竣工届出が提出されたら、電力会社の専門スタッフが電柱から建築物(ブレーカー)まで電気を引く工事を行います。引込線工事自体は2~3時間と短時間で終わりますが、12月や3月など繁忙期には予約が取れないこともあるので早めに相談するのがおすすめです。
⑦供給開始
各業者、電力会社の工事が完了したら最後に電気の供給が行われます。お申し込みから引込線工事まで6ステップありましたが電気は通っていません。電気は本当に最後、供給しても問題がない状態になってようやく流されるのです。
電気を引く工事の費用
先述した通り、屋外配線は電力会社の所有物なので電気を引くのに基本的に工事費用はかかりません。ただ、電力会社によっては作業費(諸工料)として費用を請求しています。以下に、「九州電力」の費用をまとめました。
- 単相2線式(架空線引込)…7,300円(税別)~
- 単相3線式(架空線引込)…12,100円(税別)~
ちなみに、単相2線式や単相3線式などの低圧電力とは異なり、高圧電力だと「キュービクル」などの変電設備を自社で設置・管理する必要が。高圧電力を引くには変電設備本体から設置費までを含めて200万円以上かかります。
電力会社を装った調査詐欺に注意!
電気を引くということは安全に運用する責任があります。もちろん、屋外配線などの電気設備の多くは電力会社の所有物なので責任はありません。ただ、屋内配線などの点検・管理を怠ると漏電や火災につながり責任を問われることがあります。
電力会社側は法律のもと「4年に1回」の点検を実施しています。忘れた頃に調査員が訪問するので驚きますが、基本的に無料なので適切に受けましょう。その上で、定期的に屋内配線の点検・管理を行えばまず問題は起こりません。
ちなみに、電力会社の調査員を装った「調査詐欺」が横行しています。調査員は胸章(調査機関名、調査員名が記載)と身分証明書を携帯しているので判別できます。不審な調査員が訪問してきたら電力会社に確認しましょう。
まとめ
今回は、建築物に電気を引くまでの工事の流れについてまとめてみました。お申し込みから引込線工事、供給開始までと電気を引くのはそれほど難しくありません。基本的に電気工事の業者や電力会社にお任せで大丈夫です。
ただ、コンセントや照明器具などの電気設備はオフィス内のレイアウトに大きく関係するものです。「こんなオフィスにしたい」「電気をこう活用したい」といった思いを適切に伝える必要があります。当然、業者選びは重要となる訳です。
もし業者選びに悩んでいるなら、ぜひOFFICE110にご相談ください。電気工事をはじめ、LAN工事から電話工事とオフィス内の工事のプロフェッショナルが揃っています。皆さんの思いに合わせた工事を提案します。