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クラウドPBXの導入を検討するとき、「実際にはどのくらい普及しているのか」「市場は今後も伸びるのか」が気になる方も多いでしょう。
クラウドPBXについては利用率・認知度・導入意向・市場規模など複数のデータがありますが、日本企業全体の最新普及率を「○%」と一律に示せる統一的な公的統計は、確認できる範囲ではありません。
そのため「シェア率」や「普及率」を見るときは、数字だけではなく、調査対象や設問、何を母数にしたデータなのかを確認することが重要です。
この記事では、2025年の利用状況調査や日本のHosted PBX市場予測、過去の調査を分けて整理し、クラウドPBXの現在の普及状況と今後の市場動向を解説します。
監修者
登 雄三(のぼり ゆうぞう)
保有資格:工事担任者(AI・DD総合種)/電気工事士
2010年設立「株式会社デジコンnet」の代表取締役。本社を構える神戸を中心に、全国各地でビジネスフォン・複合機・防犯機器などのOA機器の販売や電話工事、電気工事、LAN配線工事、VPN構築を主に手掛ける。2023年には名古屋へ拠点進出。
クラウドPBXとは、PBX(構内交換機)の機能をクラウド上で利用し、インターネットを介して電話環境を構築する仕組みです。
従来型のビジネスフォンでは、一般的にオフィス内にPBX・主装置を設置し、電話機を接続して内線や外線を制御します。
一方、クラウドPBXではサービスや構成によって、固定電話機だけでなくスマートフォンやPCを内線端末として利用でき、オフィス外から会社電話を扱える環境も構築できます。
クラウドPBXの詳しい仕組みやメリット・デメリットについては、クラウドPBXの仕組みを詳しく解説した記事をご覧ください。
日本企業全体を母集団としたクラウドPBXの最新普及率を、「現在○%」と一律に断定できる統一的な公的統計は確認できません。
現在の普及状況を把握するには、調査対象・回答者数・設問を確認したうえで、複数のデータを分けて読む必要があります。
「利用率」「認知度」「導入意向」「市場規模」「ベンダー別シェア」はそれぞれ異なる指標です。異なる数字を同じ「シェア率」として扱わないよう注意してください。
直近の利用状況を示すデータの一つに、トビラシステムズが2025年10月17日~24日に実施した調査があります。
この調査は、勤務先で電話設備管理をしていると回答した778人を対象としたWebアンケートです。
出典:トビラシステムズ「企業の電話業務に関する実態調査2025」
ここで重要なのは、17.9%と43.8%では分母と質問内容が異なることです。
17.9%は778人に業務で使用する電話ツールを尋ねた結果です。一方、43.8%は「よく知っている」「少し知っている」「名前を聞いたことはあるがよく知らない」と回答した人を対象に利用状況を尋ねた結果です。したがって、43.8%を「日本企業全体のクラウドPBX普及率」と読み替えることはできません。
一方で、同調査ではクラウドPBXの認知度が2024年の42.2%から2025年には53.6%へ上昇しています。電話設備の管理に関わる回答者の中で、クラウドPBXの認知が広がっていることを示す参考データといえるでしょう。
クラウドPBXの「シェア」を調べるときは、何を基準にした割合なのかを確認する必要があります。
たとえば市場売上高が大きく伸びても、利用企業数が同じ割合で増えるとは限りません。1社あたりの利用規模や料金、調査対象となるサービスの定義によっても市場金額は変わります。
「市場規模が拡大している=日本企業の○%がクラウドPBXを導入している」ではないという点を押さえておきましょう。
クラウド型の電話環境への関心は、2010年代前半から確認できます。
Parallelsが公表した2012年の資料では、従業員10人以上の日本の中小企業の約30%が、社内PBXのリース満期時にホスト型PBXを追加したいと考えていることが紹介されています。
出典:Parallels「SMB Cloud Insights 2012」JAIPA配布資料
ただし、これは実際の導入率ではなく「導入意向」を示したデータです。
そのため、約30%という数字から現在のクラウドPBX普及率を推計することはできません。現在の普及状況を確認するときは、現在実施された調査を、その調査条件のまま読む必要があります。
企業全体における正確な導入率とは別に、日本のHosted PBX市場については、2030年に向けて成長する予測が公表されています。
市場規模と従来型PBXの需要予測を分けて確認すると、企業の音声コミュニケーション基盤が変化している方向性を把握しやすくなります。
Grand View Researchが「Japan Hosted PBX Market」として公表しているデータでは、日本のHosted PBX市場売上は2024年に4億5,830万米ドル、2030年には13億2,650万米ドルに達すると予測されています。
出典:Grand View Research「Japan Hosted PBX Market」
この数字は企業の導入率ではなく、売上高ベースの市場規模と将来予測です。
また、調査元では「Hosted PBX」という市場区分を使用しています。本記事では、企業のクラウド型電話環境を取り巻く市場動向を確認する参考データとして扱います。
従来型PBX側の需要予測でも、企業の電話基盤が変化していることが確認できます。
一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)が2025年12月に公表した「通信機器中期需要予測[2025-2030年度]」では、PBXについて、音声コミュニケーション基盤の再構築やフルクラウド化が徐々に広がることなどを背景に、需要が減少傾向で推移すると予測しています。
出典:CIAJ「通信機器中期需要予測[2025-2030年度]」
ただし、この予測から「従来型PBXがなくなる」「減少分がすべてクラウドPBXへ移行する」と判断することはできません。
既存設備との連携や個別の電話要件、自社での設備管理などを理由に、従来型PBXが適する企業もあります。市場データは、電話環境の選択肢としてクラウド化が広がっていることを示す関連指標として見るのが適切です。
クラウドPBXのサービス概要や導入時の確認事項をまとめて確認したい方は、OFFICE110のクラウドPBX総合ページもご覧ください。
クラウドPBXへの関心が高まる背景には、企業の働き方や電話業務、設備運用の変化があります。
ここでは、市場動向と関連する代表的な3つの理由に絞って整理します。
クラウドPBXでは、対応するスマートフォンやPCなどを電話端末として利用できるため、オフィスだけに電話業務を固定しない構成を取りやすいことが特徴です。
2025年のトビラシステムズ調査でも、クラウドPBXを少なくとも認知している回答者が考えるメリットのうち、「場所を問わず通話できる」が35.7%で最も多く挙げられています。
これは実際の導入理由を測定した数字ではありませんが、テレワーク、外出の多い担当者、複数拠点などで電話を場所から切り離せることが、クラウドPBXの利点として認識されていることが分かります。
クラウドPBXは、サービス側でPBX機能を提供するため、自社内に物理的なPBXを設置しない構成を選べることがあります。
サービスによっては利用者をID単位で管理でき、人員の増減や拠点追加に合わせて電話環境を変更しやすい点も特徴です。
クラウドPBXにすれば必ず工事が不要になる、必ず初期費用や総コストが安くなるとは限りません。必要機器・回線・工事・ID・番号・同時通話数などはサービスや利用環境によって異なります。
費用を比較するときは、初期費用や月額基本料だけでなく、利用人数、電話番号、同時通話数、通話料、端末、オプションまで含めたトータルコストで確認しましょう。
クラウドPBXでは、サービスや構成によってスマートフォンなどから会社電話を扱えるため、電話業務を一つのオフィスだけに集中させない運用を検討できます。
そのため、出社が難しい状況や拠点分散を想定したBCPを考える際の選択肢の一つになります。
ただし、クラウドPBXを導入するだけでBCP対策が完了するわけではありません。インターネット回線、端末、電源、サービス側の障害も想定し、代替連絡手段まで含めて設計する必要があります。
災害や停電時の電話運用について詳しく確認したい方は、クラウドPBXとBCP対策を解説した記事も参考にしてください。
クラウドPBX市場が拡大していても、すべての企業に同じサービスが適しているわけではありません。
実際の導入では、市場シェアの大きさだけでなく、自社の電話番号・必要機能・同時通話数・費用・サポート条件に合うかを比較することが重要です。
各サービスの料金・電話番号・機能・向いているケースを比較したい方は、クラウドPBXおすすめランキング10選をご覧ください。
クラウドPBXは「市場が伸びているから導入する」のではなく、現在の電話環境や利用人数、必要な機能に合っているかを確認して選ぶことが大切です。
たとえば、今使っている会社番号を継続できるか、何人で利用するのか、同時に何通話必要なのかによって、適した構成やサービスは変わります。
自社だけで条件整理が難しい場合は、現在の電話設備や運用方法を確認しながら、クラウドPBXへ切り替える場合の構成を検討しましょう。
クラウドPBXは企業の電話環境の選択肢として認知・利用が広がっていますが、日本企業全体における最新の普及率を「○%」と一つの数字で断定するのは適切ではありません。
2025年の電話設備管理者を対象とした調査では、業務で使用する電話ツールとしてクラウドPBXを選択した回答が17.9%、クラウドPBXを少なくとも認知している回答者のうち「現在利用中」とした割合が43.8%でした。ただし、調査対象や分母が限定されているため、日本企業全体の導入率を示す数字ではありません。
一方、日本のHosted PBX市場は2030年に向けた成長が予測され、CIAJも従来型PBXについてフルクラウド化の広がりなどを背景に需要減少を予測しています。
つまり、市場金額・企業利用率・導入意向を混同せずに見る必要はあるものの、電話環境のクラウド化が進む方向性は複数のデータから確認できます。
ただし、市場が拡大していることと、自社にクラウドPBXが適していることは別です。現在の電話番号、必要な端末・ID数、同時通話数、既存設備、回線環境、必要機能、費用を整理して比較しましょう。
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